2010年12月12日日曜日
【読了】『ホームレス博士 -派遣村・ブラック企業化する大学院』 水月昭道


高学歴ワーキングプア」で話題になった著者の本。
著者の水月昭道氏のblogはコチラ
前著は未読だが、前著から引き続き、本著でも
アカデミックな世界を志した若者達がどれほど悲惨な
状況にあるかという事をこれでもかと記述している。

東大卒の博士でも就職率は40%程度、しかも
就職したとしても大学の講師として月給数万で
こき使われた挙句に契約を切られて路頭に迷う…
というケースが後を絶たないんだとか。

平成21年度における日本の大学院”博士”過程
修了者の”死亡・不詳の者”の割合=9.1%

という数字もエグいものがある。
「自分で選んだ道だろう」と突き放すには、
あまりに理不尽な構造的問題に愕然とする。
既得権益者(=正規の大学教員)が逃げ切りのために
若者を犠牲にして守りに入る、という図式は教育産業
でも同様ということか。

後半の「希望を捨て、しぶとく生きるには」という
章が殆ど精神論に終始しているあたりに、状況の
どうしようもなさがにじみ出ていて辛い。

著者の記述は一方的な立場からの側面を切り出した
ものなので反対意見もあるだろうけど、日本と海外の
「大学」のあり方の違いを考えさせられる。



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2010年11月21日日曜日
【読了】『ネット・バカ - インターネットがわたしたちの脳にしていること』 ニコラス・G・カー

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていることネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
ニコラス・G・カー 篠儀直子

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著者はもはや説明不要、「クラウド化する世界」などでも知られる
ニコラス・G・カー氏。

氏は近年のIT革命において、肯定しつつもその危険性を
指摘するというスタンスを取っていて、本著もそのひとつ。

日本語訳がカタいので少々読みにくいが、
・詳細な調査に基づく実験データと考察
・分かりやすい論理展開
のおかげで非常に引き込まれる内容。

インターネットの普及により人々が
「長く、深く考える」ことができなくなってきている
というのは確かに日頃から自分も考えていた。

アゴラはてブの興味深い考察の載ったブログも、
本を読むようにじっくり読むことができず、ついつい
途中を飛ばして要素だけを抽出しようとしてしまう。
本著で言うところの「注意散漫」状態なのだ。

文明のツールとして人間が発明したものが、そののち
逆に人間の生活様式を作り変えてしまう。
そして人間の脳の可塑性によって、その生活様式に特化した形に
人間自身がカスタマイズされてしまう。
時計、地図、タイプライター、印刷技術といったこれまでの
イノベーションを例にあげ、最終的に現在のWebについて言及する。

人間の長期記憶が、実はストレージのようにどこかに格納されている
のではなく、バックグラウンドで処理され続けているものというのは
初めて知った。
コンピュータのデータは、アクセスが無ければ瞬時的な処理の後に
メモリに格納されて終わってしまう。
こうした違いは人間のクリエイティブな発想とは切り離せない
要素であるにも関わらず、

『情報を処理するうえで人間的な要素が時代遅れで無用なもの
として、全ての処理をコンピュータに任せてしまった時、
我々の知能こそが人工知能になってしまうのだ』

非常に考えさせられる。

テクノロジーによって何を得たかだけではなく、
何を失ったのかという視点も大切ということ。



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2010年11月11日木曜日
リシャール・コラス氏講演会

慶応MCCの夕学五十講で、シャネル株式会社の
代表取締役社長、リシャール・コラス氏の講演会が
あったので拝聴してきた。

「グローバルワールドにおける日本
 ~鎖国か開国か?~」
というタイトルで、昨今IT業界でも問題になっている
日本の鎖国の姿勢についてがテーマだった。

論旨としては、BRICsのような途上国の発展が
目覚しい中、EUと日本は対抗策として
(1)相互的なオープンさ
(2)共有されたスタンダート
でもって通商関係を構築する必要があり、
目下話し合われているEU-日本経済統合協定(EIA)
でそれが達成可能になるというもの。

日本の単位の規格のせいで細かいが膨大なコストが
かかっていたり、EUとの貿易間には色々な問題が
横たわっている模様。
それらを全て取っ払いましょうというおはなし。

あまり見識が無かったけど、EUと協力していきましょうと
いう話は今かなり熱いトピックのようで、勉強になった。
リシャール・コラス氏は日本語ペラペラでユーモアもあって、
日本が好きなんだなというのがすごく伝わってきた。

IT業界も世界に向けてオープン化していけたらと思う。

-----------------------------------------------
講演のまとめは、慶応MCCの公式サイトのblogにある↓
慶應MCC「夕学五十講」楽屋blog :
グローバルワールドにおける日本 <寓話風>
リシャール・コラスさん

興味ある方は是非。



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2010年10月24日日曜日
エンデューロ

第11回スズカ8時間エンデューロ秋SP
に出場してきた。

種目はママチャリの4時間耐久。
4人で交代しながら走り抜きました…
いやあ、しんどかった。



朝4:30に出発して場所取りしたり、
東京~鈴鹿を強行軍で車で往復したりと
なかなかシビアなスケジュールだったけど、
その分良い経験が出来た。

F1と同じコースを自転車で
走れるというのは気持ちいい。

機会があれば来年以降も出てみたいけど、
いかんせん遠いなあ…。



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2010年10月14日木曜日
【読了】『パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』 海部 美知

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)
海部 美知

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著者は、ホンダに総合職として入った後、
自費でスタンフォードに留学してNTTアメリカに
就職。その後通信ベンチャーを経て今はIT・新技術の
コンサルをなさっている御方。
ブログ「Tech Mom from Silicon Valley」も運営
しているみたい。

本の内容はちょうど今世間で通信・電機業界を
中心に言われている日本の「ガラパゴス化」に
関するもので、すごく分かりやすい。

実はアメリカも「鎖国」の先輩だけど、
アメリカはその広さと文化の多様性ゆえに、
シリコンバレーを中心として内部から黒船が
出現しやすい環境である。
日本もそうなるように、「ゆるやかな開国」を
目指していきましょう、という論旨。

主張は真っ当なので納得はいくんだけど、
現実問題として既得権益とか守旧派というものが
存在していて、なかなか具体的なプロセスを辿れてはいない。
その結果、2010年現在日本はまだまだ苦しんでいる
というのも現実で…
もう少し踏み込んだ内容があればなお良かったかも。

現在の日本が置かれている状況を、分かりやすい
文章にしてまとめているのはうまいですね。
思考が整理されました。



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2010年9月26日日曜日
沖縄旅行。

会社の同僚と4泊5日で沖縄に行ってきた。
シーズン真っ盛りでは無かったらしく
(というか台風シーズン…)、
全体的に観光客は少なめだったかな。

大学生の時に学会(DEWS2006)で
行って以来、二度目の来訪。
なんか懐かしい風景もありつつ、前回は
見なかったところも観光できたりして、満足。

東京で暮らしてると、沖縄の風景は
とても魅力的に映る。建物が低くて空は近いし、
ごちゃごちゃした雑踏も活気がある。
また行きたいし、いつ行ってもこの風景が
残っていて欲しいと思う。


写真は、北谷(ちゃたん)のサンセットビーチ。

書いててオリオンビール飲みたくなってきた。



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2010年9月14日火曜日
【読了】『ヒトはどうして死ぬのか -死の遺伝子の謎-』 田沼靖一

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田沼 靖一

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「死」について科学的に考察した、
とても分かりやすい書籍。

かつて、細胞の死は外部からの
強い衝撃などによる壊死(ネクローシス)
以外は無いと考えられていた。
しかし、1972年、病理学者J.F.カーの論文により
「細胞が自ら一定のプロセスを経て死んでいく」
アポトーシスと呼ばれる現象の存在が明らかになる。

この「遺伝子によりプログラムされた細胞の自殺
は、発表当初は殆ど注目されることはなかった。
当時は「死」について研究を行うことに、意義が
あるとは認められなかったためである。

長い年月を経て、ゲノム解析の研究が進められる中
21世紀に入って初めてアポトーシスのメカニズムが
解明され、注目を受けることになる。

アポトーシスの「細胞が自ら死んでいく」という働きは
単純に生物個体としての死に関する話だけではなく、
たとえば成長過程でヒトの体が形作られていったり、
オタマジャクシがカエルになる時にしっぽがなくなったり
というメカニズムにも関わっている。

生物が形作られる際は、
細胞を多めに作って、アポトーシスによって
不要な部分を削る
という過程を経ているということになる。

ヒトの免疫機能も同様で、免疫システムは
体内での遺伝子組み換えにより無数の免疫細胞を
作り出しているが、役目の無いものや有害な可能性の
あるものが生まれる可能性もある。
免疫細胞のうち実に95%が成熟過程で「無用、あるいは有害」
とみなされ、自殺するよう命令を受けてアポトーシスにより
除去されている。これにより健全かつ有用と思われる
免疫細胞のみを体内に残すことが可能となっている。

このように、アポトーシスは単に「死」のみならず、
それを制御することでガンやアルツハイマー、HIV
といった難病に対する新たな治療薬を発見する新しい
手法となりえる可能性を秘めている。

著者の田沼靖一氏はこの分野の研究者であり、
「死」を科学することから、「生死」に対する哲学的な
考察の助けにもなると述べている。
全体の繁栄のために遺伝子が「自ら死ぬ」というところから、
「利己的な遺伝子」を否定しているところが印象的。

新書らしく非常に読みやすいので、
ぼんやりと「生死」について考えたくなった時などに
オススメ。「死」が単に暗いものではなくなるかも。



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