2010年11月21日日曜日
【読了】『ネット・バカ - インターネットがわたしたちの脳にしていること』 ニコラス・G・カー

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていることネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
ニコラス・G・カー 篠儀直子

青土社  2010-07-23
売り上げランキング : 292

Amazonで詳しく見る


著者はもはや説明不要、「クラウド化する世界」などでも知られる
ニコラス・G・カー氏。

氏は近年のIT革命において、肯定しつつもその危険性を
指摘するというスタンスを取っていて、本著もそのひとつ。

日本語訳がカタいので少々読みにくいが、
・詳細な調査に基づく実験データと考察
・分かりやすい論理展開
のおかげで非常に引き込まれる内容。

インターネットの普及により人々が
「長く、深く考える」ことができなくなってきている
というのは確かに日頃から自分も考えていた。

アゴラはてブの興味深い考察の載ったブログも、
本を読むようにじっくり読むことができず、ついつい
途中を飛ばして要素だけを抽出しようとしてしまう。
本著で言うところの「注意散漫」状態なのだ。

文明のツールとして人間が発明したものが、そののち
逆に人間の生活様式を作り変えてしまう。
そして人間の脳の可塑性によって、その生活様式に特化した形に
人間自身がカスタマイズされてしまう。
時計、地図、タイプライター、印刷技術といったこれまでの
イノベーションを例にあげ、最終的に現在のWebについて言及する。

人間の長期記憶が、実はストレージのようにどこかに格納されている
のではなく、バックグラウンドで処理され続けているものというのは
初めて知った。
コンピュータのデータは、アクセスが無ければ瞬時的な処理の後に
メモリに格納されて終わってしまう。
こうした違いは人間のクリエイティブな発想とは切り離せない
要素であるにも関わらず、

『情報を処理するうえで人間的な要素が時代遅れで無用なもの
として、全ての処理をコンピュータに任せてしまった時、
我々の知能こそが人工知能になってしまうのだ』

非常に考えさせられる。

テクノロジーによって何を得たかだけではなく、
何を失ったのかという視点も大切ということ。



0 コメント | コメントを書く  
Template Design: © 2007 Envy Inc.